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「SF サムライフィクション」--ダメ映画には真面目に怒っちゃうわよアタシは [映画レビュー※ネタバレ注意]

ダメ映画とバカ映画、というのがある。

ダメ映画とは「千年の恋 ひかる源氏物語」や「デビルマン」である。バカ映画とは(狙ってるにしろ狙ってないにしろ)馬鹿要素にあふれた愛すべき作品である。「北京原人」やら「幻の湖」やら「色情大名 徳川セックス禁止令」なんかがそれに該当すると思う。そういう区分でいえば、このMTVのクロサワさんが作った「SF サムライフィクション」は完全にダメ映画である。後述する理由もあるので、今回は真面目に怒っております。

もし突然「一番つまらないと思う時代劇映画はなんですか?」と尋ねられたら私は「サムライフィクション」と答えると思う。それも「つまらない時代劇」まできたらコンマ5秒即答できる自信すらある。それぐらい本当につまらなくてくだらない映画だった。

物語は山本周五郎を下敷きに(ってお前あんなのがそうだといわれたら周五郎が墓からよみがえってくるぞ)なんでもピースなサムライ映画を目指したそうだ。なんだよピースって。シガレッツのことでせうか。まあそのあたりの腑抜け具合からして、出来もしれようというもの。布袋寅泰に盗まれた宝刀を奪還せんと家老の息子(吹越満)が、戦いを挑むが返り討ちにあう。すんでのところで侍(風間杜夫)に助けられ、彼のうちで養生しながらその娘(緒川たまき)といい感じになる。んでおつきの忍者(谷啓…)とかそのあたりのギャグ要員と茶番を繰り広げ、夏木マリが見得きって最後、一見腰抜けサムライと思えた風間杜夫が実は凄い剣豪であることがわかり、布袋と対決して終了。

ここで唐突に恥ずかしながらも頑張ってカムアウトすると若かりし頃は布袋寅泰のファンでして(この告白とケツをだして銀座交差点で見得きるのとどっちが恥ずかしいか私にはわからん)この映画、どちらかというと期待満々でみにいったわけです。生涯に二度私は映画館で不思議な思いをしているが、そのうちの一回がまさにこの場で起きた。(後の一度はスクリームを映画館で見て爆笑していたら周りから胡散臭い目でみられたことですかね)鑑賞中、周囲は爆笑につぐ爆笑だったんだが、私にはその理由がさっぱりわからなかった。谷啓が受け手のないボケを一生懸命演じる姿は辛いのひとことだし、マリさんは一人だけかっこよすぎで浮いている。吹越はまあうまいけれども、布袋も悪役顔と存在感を十分に生かしてはいたが、それにしてもあまりにも殺陣が下手すぎる。下手な殺陣を編集と音楽でごまかしているのが丸分かりなのも辛い。風間杜夫が飄々とした剣豪をいつもの要領で演じていたのだけが救い。あとは緒川たまきの可憐さ、とか。(正直、監督がどこに比重を置いてるか非常にわかりやすい映画ともいえるが)

私の尊敬するある人はこういった。『僕は黒澤明監督のこんな言葉を思い出しました。「脚本が素晴らしければ、三流の監督が撮ってもどうにかなるが、ダメな脚本は一流の監督が撮ってもどうにもならない」結局、映画というものはどんなに映像が素晴らしくても、脚本の出来が悪ければその映画はダメな映画ということなんです。』私もそう思う。これに私は監督の哲学を加えて欲しい。哲学が言い過ぎるならコンセプト、といってもいいかもしれない。「何」が撮りたいのか。ピースなチャンバラなんて甘過ぎて蟻も寄り付かないようなことを抜かす前に、「子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる」でも100回みればよいのだ。編集と音楽で新感覚の殺陣をとりたいなら、まず基礎のできている人間が演じてからでないと、話にならないことを理解しろ。腰がフラフラと定まらない、浮き足立って刀を振り回すだけのヘナチョコチャンバラなんて、スタウォーズの旧三部作のほうがはるかにマシである。(最初は下手っぴを表すための演技なのかと思ったら剣豪設定の布袋までイチリツ罹患しているのが恐れいる)編集と音楽というある意味ドーピングを打ってうってうちまくっても、普通にうまい若山トミーにはまったくかなわないというのが悲しい。(まあアノヒトは天然全身ヒ○ポニストみたいなもんだからな…)

人を斬るのが嫌な剣豪というモチーフは少年ジャンプの連載マンガにもあったぐらいで、だからこそ映像で見せるのなら、なにか脚本で「魅せる」工夫をすべき。それを全て役者個人の力量へ帰着させるのは、正味の話監督および脚本家の腕のなさを露呈しているだけだ。山本周五郎的「いいハナシ」へ着地したいのか、浅春群像へ落ち着きたいのか、チャンバラをカッコよく見せたいだけなのか、はたまた緒川たまきをひたすら可愛く取れば気が済むのか、映画として成り立たせたいなら、全てのエッジをたたせようとするのではなく、引き算を用いて取捨選択するべきであった。そういう「映画の文法」が全く分からない人が編集と音楽でゴマカシゴマカシした作品がこの「SF サムライフィクション」であると私は断言する。(もっともこの取捨選択のできなさ加減はCASSHERNといった異業種参加監督に割りと当てはまる病理であると、私は思う。映像的な編集はできても、脚本の編集ができてない、というか)

この映画のレビューを見ていると、殺陣が新鮮だの新感覚だの新しいだのという賛辞がならんでいるが、そういう人たちは本当に時代劇を見たことがあるのか?と問いたい。新鮮と感じるほど見た上でいってるのか?目新しいのと新感覚を誤解してないか?ガレの真贋が分からない目で見ても、ただの古びたガラス工芸にしかみえないのと同様に、殺陣を知らない、あまり映画を見ない層に新鮮だの新感覚だの評価されても、それは単に底が浅いということの証左に過ぎないのではないだろうか?MTVのクロサワは、歌って踊るミュージシャンおまけ映像だけ撮っていればよかった、ということがよくわかった。まあなんですか、そもそもここで変に高評価を得てしまったことが、後の赤影なんてみょうちきりんなことになるそもそもの発端となってしまったのかもしれない。映画好きや時代劇好きはおそらく布袋の映画なんて、とハナから相手にしてなかったことが悲劇の原因なんですな。ダメ映画はダメ映画とちゃんと教えてあげないと無駄な予算が費やされ続けてしまうのだ。リメンバーCASSHERN!○○(お好きな映画会社監督名をドーゾ)よ、もうよせ!こんなことは(倒置法)。

SF サムライ・フィクション

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  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 1999/06/17
  • メディア: DVD


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アキオ

身の丈のレポート、は、やっぱりいいな、
と思わされました。

なんでコメントいれてるかと言うと

どうしてもダメな物はダメ、と言う意見と、
デビルマン、ありゃないだろう、と同意だったためです。
by アキオ (2007-06-05 00:44) 

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