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「パンチドランク・ラブ」正しき童貞のあり方 [映画レビュー※ネタバレ注意]

パンチドランク・ラブ DTSエディション

パンチドランク・ラブ DTSエディション

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2005/07/06
  • メディア: DVD

これほどかわいらしい、お伽話としての恋愛映画を、久しぶりに見たような気がする。

ポール・トーマス・アンダーソンは「ブギーナイツ」をみて、かつてこれほど中二病、中学男子魂を画面にやきつけた監督がいただろうかと驚愕したが、今回もやはりそうで(ちなみに「マグノリア」はトムちんだから未見)、主人公のバリー・イーガンが中坊根性を爆裂させてくれる。

バリー・イーガンはしがないセールスマンだが、キレやすい自分を持て余している情緒不安定な童貞(推定)。姉からやいのやいのいわれるのがトラウマになっているようで、自分の恥ずかしい過去をあばかれるとブチ切れて暴れる癖がある。ある時彼はアヤシゲな広告に誘われてテレフォンセックスを試みる。だがその後何度も「あのときのお相手」から金貸してくれ電話がくるようになり、それはやがて職場にもかかってくることに。そんな中、姉の同僚リナといい感じに発展し、彼女を追いかけハワイに行くほどの行動力を見せるようになる。だが、帰国して春満喫なバリーたちを乗せた車が追突されリナが怪我を負ってしまう…。

とにかく行動力だけは無意味なぐらい豊富な、まさに正しき中学生男子であるところのバリー(アダム・サンドラーが夢見る瞳で好演)。彼の行動はなんとなくヘンで、自意識過剰で、手前勝手でいいとこ取りで勢いとノリのレッツゴーすぎで、見てるこっちが恥ずかしくなるくらい。(プリンを大量に買ってマイルをためて世界旅行とか。子供じゃねえんですから)それがまさに若造テイスト満載でイカスのだが、半端じゃない描写力ゆえ、いたたまれなさのあまり悶絶死する童貞どもが見えますよ私には。(でもねえ、そんなことされたらおねえさんコロっていっちまいますよって感じなんだな。女はこういう男の少年魂に弱かったりするのだ)まさに中二病万歳、童貞だっていいじゃないか人間だもの!と高らかに宣言してるようだ。そんな主人公に対し、相手役のエミリー・ワトソンが見守る女でよく受けている。で、またも登場の常連フィリップ・シーモア・ホフマン。彼は今回アヤシゲなテレフォンセックス斡旋業者に扮しているが、こういう癖の有る役どころを演じさせたら今右に出るものがおりませんな。

ポール・トーマス・アンダーソンは左右対称と影、明暗を効果的に使用している構図を多用し、場面場面が一枚絵としての魅力をもっている。「he needs me…」とささやくシェリー・ドュバルの歌声が印象を強め、まさしく現代のお伽話ーー正しき中学生男子と乙女の心もつ疲れた年増のための物語を作り出している。短くすっきりとまとめていて、後味爽快。ドッグヴィルみてすっかり気力が萎えた私は涙とともに明日の気力を取り戻せました。ポール・トーマス・アンダーソン、君は裏切らない人だよホント。(つーか久しぶりに笑い泣きしたな…)

こういうのをみると、まじめに恋をしたくなるし、そういう人があらわれるまではせっせと自分を磨いていようと思える。そういう「前向き力」にあふれた佳作です。疲れた女性にオススメ。ユンケル替わりに是非どうぞ。


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ken

これを「かわいらしい」と言えるのは、懐の深い女だからでしょう。
男としてはなんだか見てられませんでした。
そんなことより、ポール・トーマス・アンダーソンと言えばマグノリア。
これを観ずして死ねません。
今観ると、トムがかなり笑えると思います。ぜひ毒を食らわば皿まで。
by ken (2006-11-23 19:05) 

瑠璃子

>懐の深い女だからでしょう。
この間男友達と過去男話をしていてら「視点が母親だよね」といわれたんですけど、でも母親ほど距離感ゼロにしてないんですよね。どっちかというと突き放しているのかも。うーん。酷い女だな私はw
マグノリア!そう、見なきゃ見なきゃと思っていたんですよ。でもトムちんだからなあ…と敬遠していたんですが、背中を押していただいてありがとうございます。早速DISCAS予約しましたですよ。
nice!とTBありがとうございます。
by 瑠璃子 (2006-11-23 21:35) 

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