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甘く溶け出す秘密盗んで、ゆくんだ [ごきげんいかがワン・ツゥ・スリー(日記)]

夜のにおいは微妙に変化していた。

風の当たりも、随分柔らかくなっている。また季節が終わって、新たな時季がくる。二人のシーズン。一日が終わる。日々が過ぎる。早足で駆け抜ける音が聞こえる。真夜中にちかい。道には人影もまばらで。だが夜はなにかを瑞々しいものを湛えて、闇の中に意外なほどの広がりを見せている。

コンビニへ歩くあいだ、浅川マキの「淋しさには名前がない」を小さく唄った。

「……そうね、気ままに暮らしていこうかな なんにもいらない これからはだけど これで いいのかしらね また ひとりよ ン… 私… あの人のこと 恨んでないの 男の人は いいものよ 」

空気は湿り気を帯び、底の方に僅かな温かさが感じられる。月はない。妙によい夜だ。コンビニで占い特集をしている雑誌を買って、運命が少し良いと書かれていて、もちょっと気持ちよくなって。どこまでも歩きたくなる夜だ。歩けるような気もするし。

コンナ夜はあたたかい飲み物を買って少し、歩きたい。気の合う人と二人ぐらいで。気が済むまでずっと。不思議と疲れないだろう。大きな力が作用しているように。

いつの間にか浅川マキは遠くになってサニーデイサービスの「夜のメロディ」だ。

「ねえ、世界がもう 目の前に あるような そんな夜を知っているかい?

ボクの大切なモノに キミは唇寄せて 甘く溶け出す秘密 盗んで いくんだ

春の夜に僕ら からっぽになるまで ひらひらと舞う花びらの なかにいた」

夜のメロディはそこかしこで流れる。ちいさな歓喜とそれにともなう倦怠。「いまここ」にいることでの孤独が、ひたひたとしみてくる。でもそんなに不快ではない。なにかがすこしずつ変わってきている予感が、全身に満ちてくる。わくわくする、あの感じ。じゃれあいながら競歩をする二人連れとすれ違った。あのふたりにも静かな夜のメロディが。春はもうすぐそこなのだ。


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コメント 4

phantom

忘れていた夜の東京の匂いを思い出す。
ちょっとした、孤独感と幸福感。
by phantom (2005-02-16 07:33) 

瑠璃子

孤独っていいですよね。なんか。ひとりはいいもんだ、と思う。浅川マキの歌を聞いていると。
by 瑠璃子 (2005-02-16 09:39) 

ああ、なんかやさしくて哀しくて、すごくイイッス!
by (2005-02-16 23:09) 

瑠璃子

>まぐま氏
ありがたう!夜のにおいを感じられる日々をおくりたいものです。
by 瑠璃子 (2005-02-17 01:48) 

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