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「恋人のいる時間」「嘘の心」最近見た映画簡易感想 [映画レビュー※ネタバレ注意]

恋人のいる時間

恋人のいる時間

  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2003/05/21
  • メディア: DVD


恋人のいる時間

恋人のいる時間

  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2005/03/23
  • メディア: DVD


■「恋人のいる時間」

ゴダール。いわゆる“ゴダール”と聞いてイメージする--難解、小難しい、理屈っぽい、わけがわからない--そのままの作品。若奥さんが旦那と愛人との間をいったりきたり。しかもどっちの子を妊娠したかわからない、といったストーリーを実験的に映像化。出演者の演出なのか素なのかわからないインタビューがでてきたり、生活音をそのまま同時録音してせりふが聞き取れなかったり、テキトウな会話を録音して盗み聞き風に仕立てたり、ネガポジ反転映像を使用したり。またゴダール特有の人を食ったようなB.G.Mの使い方はここでも生かされており、人がただ馬鹿笑いする声が録音されたレコードをかけながら夫婦が(冷え切った関係を理解しながらあえて無邪気に)追いかけっこをするシーンが印象的だった。そんなアバンギャルドな展開も、ストーリーがシンプルなのでまだ見ていられる。冒頭、白シーツの上で男女の手が絡み合うシーンで始まり、絡まりを解くシーンで映画は終わり円環は閉じられる。

ゴダールは作品の中で常に相対化、「距離」をテーマに映画作りを行っているように思える。おそらくドゥルーズ先生もそういっているハズ(テケトウ)。それは妻と夫、愛人と妻、といった登場人物の「距離」だけではなく、鑑賞者と出演者、出演者と物語、鑑賞者とゴダール、ゴダールと映画、そういった「距離」についていかに自覚的になるか、そこを繰り返し言及しているのではないだろうか。「恋人のいる時間」では、単純な婚外交渉をテクストに外的世界と内的世界について外的世界を通して映し出されるオノレの内面を炙り出そうとしているようだ。

さまざま雑誌の広告、あるいは標識、街角の看板、その他から主人公の心象風景にそぐう言葉をカメラが捉え、あるときはナレーションされる。そういう意味では内的心象風景を投影したものが目に映ることの証明--人は内的な心象を外的環境に投影し意味を読み取ろうとするものである、というようなことを表しているのだろう。つまり人は見たいものしか見ないし、見えない。

嘘の心

嘘の心

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • 発売日: 2000/12/08
  • メディア: DVD


■「嘘の心」
クロード・シャブロルの作品。

絵画教室を開いている画家と医者であるその妻が主人公のサスペンス仕立てだが、謎解きは主眼ではない。あるとき画家の教えている女児が帰りに強姦され殺される。小さな村は猜疑心と噂話で満ち、避暑に来ていたジャーナリストは画家が犯人と当て推量し、情報を得るため妻に近づく。元々精神的に不安定な画家はより均衡を崩し家に閉じこもる。刑事が家を訪れ、あれこれ尋ねるたびに妻へ依存する度合いを深めていく。それを受け止めながらもどこかで負担に思っている彼女は、ジャーナリストと不倫関係に陥る。それを知って苦しむ夫。
結局彼女はジャーナリストの軽薄さに我慢ならず、中途半端な関係のまま断ち切り、夫の元に戻る。ジャーナリストとは何事もなかったように『ご近所付き合い』を続ける二人。ある濃霧の日、絵画の修復依頼にきたジャーナリストを送り届けた画家は、彼に挑発される。その夜遅く帰宅した夫を不審に思う妻。翌朝発見されるジャーナリストの死体。妻は二重の疑いを抱く。
やがて女児殺人事件の犯人がつかまり(噂を流していた花屋の女主人の夫だった)、ジャーナリストの死も心臓発作で片付けられる。だが夫は妻に告白する。彼を殴ったら動かなくなった。そして誰かが彼を訪ねたように偽装した、と。妻は夫をただ受け入れる。自分の犯した不義については語らぬまま。

シャブロルがここでテーマにしているのは疑心そのものであると思う。そういう意味ではタイトルどおり「嘘の心」、嘘をつく、その行為そのものをとりあげている。何故人は嘘をつくのか、そもそも嘘とはどういう行為であり心の作用なのか、そこを解剖学的に掘り下げていこうとしているように思える。小さな池に放り投げた小石は思いもよらぬほど大きな波紋を広げていつまでも静まらない。嘘は一度つけば、隠そうとして更につき続けることになる。妻は一生真実を告白することはないだろう。嘘をつく心、それをめぐる物語。

二作品とも佳作で悪くはない。だがそれ以上の印象を持ちづらい作品だった。星をつけるなら★★★1/2というところ。


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日本インターネット映画大賞

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