僕は疲れて欲情する [マボロシの男たち(エロ風味)]
「どこへいくの?」と彼が尋ねた。
私は「そこにいくだけ」と告げた。物憂そうに眉を動かした彼がなにかをいう前にドアを開けた。ここには戻らないわけだし。
外はもう明るい。日差しの強さが今日の天気をあらわしている。うんざりするほど、と私は口に出した。「きっと」
すれ違う人々はどこか朗らかな顔をしていて、行楽シーズンという言葉を思い出した。もみじがきれいだよ、と彼が言っていたのも同時に。彼ってどれ? 少し笑った。コンビニは普段よりがらんとしていて、店員が定まらない視線を投げている。とりあえずペットのお茶を買って、レジに置く。数秒遅れてリアクション。私も君も同じ気分。
気の抜けた声に追い出されれば、ますます日は勢いを増している。長く追いすがるように伸びてきて、それがまた私を射るのだ。彼の味を思い出してーーそれはあの彼だけれども、でもあの彼ってその彼で、だからこの彼とは別な彼ーー舌をだした。ピンク色のざらりとした舌が大気に触れ、冷たさがしみいる。またこの舌を使い、あれの上を這いずることはあるのだろうか。それってつまりこれでしょと私はもう一度コンビニにもどってソフトクリームを買う。生暖かい舌を冷やすにはいまはこれしかないのだから。
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