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19回目の神経衰弱(そこにいるのは万華鏡の瞳のアナタ) [マボロシの男たち(エロ風味)]

横に鈍く裂いた目の、端を鋭くさせると彼は「僕はキミがすきだ」と唐突に告げた。真摯と不安と含羞と韜晦が入り混じった、そのすべてであり、どれとも違う――決意と決別の悲しみが微かにうかがえる表情で、真正面から私を見つめていた。畳み掛けるように小さく「かわいいと思うし」と続けたりして。どちらにしろ、女ですもの、そんなカオをされたら、万事快調と答えざるを得ない。私は呆然としながら、陶然とは遠い位置で彼を見ていた。熱気は、伝染する。地下の暗いバーの中には諦観と感傷と希望なき明日への期待が渦を巻き、誰かを引きずり込もうとしていた。私が選ばれたのかもしれない。もう一度、切れ上がる目の端を見つめた。黒目がちで、それがときおり動物的にひかる。私には打つ手がなかった。既にチェックメイト済みだったので。

私も彼も、深遠を覗くように、目の前でゆらめくろうそくの小さな炎を見つめていた。たくさんの“諦めねばならないもの”を左手で数えながら。


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