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ジュ・テームでもモワ・ノン・プリュ [マボロシの男たち(エロ風味)]

もう愛してないの、とヤツに告げた。

愛情は永続しない。愛せなくなったら愛せないとはっきり言おうといつも思っている。だからいった。もう愛してないの、と。
ヤツはぬるい目で私を見つめ「だめ」と答えた。
いつもこうだ。

「なんだか鼻水が止まらない」と彼はいう。
シーツを変えたからかねえ、とふってみるが、うーんそうねえ、と脳を動かさずに答えられた。まあいいや、と少し考えてみる。いなくなったら、さてなにをすべきなんだろう。ほかの男を渡り歩くのもいいし、尼僧のようにひたすら潔斎するのもよい。いまなら、たぶん潔癖に過ごすな。男に関わるよしなしごとは当分不要だ。
「どうしたの?」と鼻をかみながら気にしてたりして。まあねえ、と同じように脊髄反射をしてみて。「秋だからね」とわかったようなわからないようなことを彼はいった。耳元に息がかかる。彼はいつの間にかそばにきていて。私を両手で抱えるようにして。「ずっとこのままだよ」と白いことをいうのだ。そうなればすることなんて決まっている。

私はまたヤツの下で喘いだ。的確に打ち込まれる杭の存在を十分に感じながら。脇の下を舌がはう。くすぐったさに耐えていると、やがてさざ波のように震えが広がる。「昨日夢を見たんだ」と彼は続ける。「君と二人で外を歩いていた。あそこの区役所付近で君が“ちょっと待ってて”という。はしゃいでいたから、きっと男が来るんだろうな、と僕は思った。君は嬉しそうだった。そういう夢」結末は?と私は息を継ぎながら。「それだけだ」と彼は私を観ないようにして。私たちは視線を交差させず、ただ下半身だけ交じりあわせて。輪郭のぼやけた印象派の絵画のような風景が閉じた目の奥にぼんやりとうつる。それもやがて消える。わたしたちのあいだはただ快楽だけになってしまうから。この絡み合いもつれあった感情も、次第に。

アタシは愛してる?といわれてどうしても、私も愛してると答えることができない。
Je t`aime といわれたら Moi non plus と答えるしかなかったセルジュ・ゲンズブールのように。


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