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誰かのために私は祈る [ごきげんいかがワン・ツゥ・スリー(日記)]

彼のために私はいのる。

私と知り合ったとき、すでに彼は病に犯されていた。病は不治とされていた。
彼は明るい。時折私も病を忘れる。病はそのウチに深く沈み、彼の内臓を食い荒らす。誤ってぶつけた赤黒い腕の内出血がなかなか治らないのをみると、私は彼の中にある暗さを感じる。バカな彼はすぐにそんなことを忘れてしまう。翳のささない忘却のかなたにある彼をみるといつも願う。そして私は祈る。その日々が少しでも長く続くように。

神社なんぞで祈ったことが一度たりとも成就したことがない私は、だからこそ、彼の病気がますます悪くなれば、としか祈れない。そうして神社から離れて初めて禁忌が解け、彼のためにいのることができる。山や自然にいのる。いつか彼がなんの気兼ねなく日常をおくり、その笑顔にまったくの曇りなく過ごせることを。いつか彼が私になんの負い目もなく私を見つめることができるように。

彼のために私はいのる。

また私は彼らについても祈る。

彼らは行きたくて行くのではない。本能が制御された現代社会では好き好んでその場にでたい人間などそんなにはいないだろう。多くはなにかを守るため、誰かを守るためその場にいかねばならない、そう決意してそこへむかう人々であると。彼らのかかとには常に水際がある。その水際を作り出した人間について、私は考える。そして水際を作り出した人間は、かかとにそれを背負うことはない。国を思い、家族を思い、大切なモノを守るために戦わざるを得ない人々を、おもう。

彼らについて私は祈る。

その震える手で二度と誰かと誰かの生死をわけることのないように。そういう場が再びこないように。個がある限り、戦いを防ぐことはできないのかもしれない。だが避けることはできるはずだ。こうして誰かのために祈ることが、誰かのために祈る人々が多ければ多いほど、きっとそれは可能なはずだ。そう信じたい。いまは。

私は彼について祈る。彼らについて祈る。祈るしかすべを持たない自分の非力さを嘆きつつ、祈ることでしか別な可能性を生み出す手段をもてないなら。プロフェッサー?


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