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花のように目を閉じれば [みちゃイヤン☆(エロ濃厚)]

「まだダメ」と彼は言った。

体臭とわたしのあれの匂い。舌が的確に捉えてより硬く尖らそうとする。
一時間近く続けられると繰り返し繰り返し、もうそれ以上「耐える」ことが難しくなってくる。お願い。彼の手が伸びて私の手のひらを捉える。指を絡ませて強く握り合う。あつい。膝の裏を汗が伝う。私の周囲だけモヤがかかったように湿度が上昇する。ような気がする。つちふまずがむずむずしている。舌の動きに合わせて腰がゆれる。もうがまんできないから。髪をくしゃくしゃと手でかき混ぜると彼は顔を上げて身を起こした。

だまされてると思ったほうがいいよ、と年上の男友達は笑った。
「僕ね、アナタから話を聞いたとき、沖縄ベイブルースを送らなきゃいけないな、と思ったのね」
ダウンタウンブギウギバンドのその曲は、約束を守らない男のもとから女がでていく、というものだ。しかしいまそんな不吉なことをいってもしょうがないから、と泡が立たなくなったビールを一気に飲みくだすと私をみた。
やだなそんなオタメゴカシ、と私は苦笑いした。
「いいたいことがあるなら言ってくださいよ」
まあねえ、と視線を外して続けた。つまりね。
「非モテがメンヘルに手を出して、手慣らしにして、他にも…ってなったけど、結局のところショセン非モテなのでまあいいかと戻ってきた、こんなところなんじゃないでショーカ」
語尾はちゃかしても無頼を気取りながらだからこそかもしれないがロマンチストである友人が単なる興味本位でこんなことをいってるわけではないことはわかる。ありがとう、と私は答えた。

足を開く。彼がカラダを割り込ませてくる。話したいことはいろいろあるけれど、なし崩しにこうしてしまうのは確かにお互いコレが好きだというのはあるかもしれないが、フィジカルへの信奉があるからかもしれない。
ぬるぬるして、あそこがふやけそうだ、と彼は言う。芯の方の熱を感じながら、わたしたちは。またあがっていく。早く、しないと、約束に、 間に、合わない。細切れになんとかそれだけ伝えたが、だけど早くしたらつまらないよ、と返されただけだった。

彼の仕事上がりを待ちがてら年上の友人と飲んでいたのだが、友人が会いたいといっていることを話すと(実は友人はライター時代の彼のファンだった)挨拶するよという。やがて彼が合流し、店を変えて、そのまま飲み続けた。二人は共通の話題を話していた。彼はあのときと同じように笑っている。酔いが回りだした友人は嬉しそうに、僕ネ、あなたがだした本、大好きだったんですよ、と繰り返した。単なる酔っ払いじゃないか、と半ばあきれていたが、彼が席を外したとき、鈍く光る横目で私を捉えて言った。いい男じゃないか。あんな誠実な人はちょっといないね。想像していたのと違って、よかったよ。
「まったく」私は口の端で表情を殺した。ちゃんと見てるなんて、うそつき。

彼が私の足を抱え後ろにのけぞり、そして反動をつけてのしかかってきた。奥まで、はいったよね?楽しそうに。あまりのことに、瞬時に絶叫が脊髄から駆け上るが、彼は私の口に指を入れ、舐めて、と、それを封じ込める。最奥の上のほうをこすりあげられて、身をよじろうとするが、押さえ込まれているので、身じろぎできない。腰をゆらゆらと動かす。微妙な動きほど、ぬるま湯のような苦しみが足の先から痺れてくることを、私はもう十分理解している。
動きが少しずつ早くなっていく。打ち付けられる。肉と液体の音。咀嚼する音にも似た猥雑なそれを聞きながら私は目を閉じる。より集中しようとする。口が開き、舌が出る。その舌をしゃぶりながら彼は尋ねる。どっちに出す?口?外?「なかがいいい」と私は答えた。
「まだダメだよ」今日はしばらくだしてなくて濃いから妊娠しちゃう。私は鼻を鳴らした。だいじょうぶなのに。
口から妊娠させてあげるよ、と彼は言った。飲んでね。かなりでるよ。引き抜かれて私はなんとか体を起こし、ゆっくりと唇に押し込んでいく。体液の味がひろがる。ためいきと同時に一回、二回。さらに続く。たぽたぽになった口の中にまだ吐き出される。上下させて全て搾り取る。
顔を上げる。柔らかな彼の微笑。美味しい?答える代わりに私は飲み下した。

年上の友人はほっとしたような顔をしてタクシーに乗り組んだ。とにかく、あんな人はいないから捕まえておかなきゃダメだよ、とこっそり私に伝える。言ってることが180度違うじゃないの?と私の苦笑をみないようにして、車は出発する。
「悪かったね。突然引き合わせたりして」
いや、ダメならダメというからいいんだよ、と口の端を下げて彼は笑った。嬉しそうだったね。
「そりゃアナタのファンですからねえ」
それだけじゃないと思うよ、と真面目な顔をしていた。こんな状態になって半年以上経つが、時折、知らない顔をする。

帰ろうか。彼は私の手をとった。

彼になにをあげられるのだろうか。心臓を、といわれたら切り開いて差し出せるかといえばそんな浪漫的発想からは遠くはなれた自分を見出さざるを得ない。それでも自身の内にあるものならば悉く彼に差し出したいという強く甘い痛みを感じていた。いずれこの痛みを諦観とともに懐かしく思い出す日がくるとしても、そして思い出すことすらなくなるときもやがては訪れるのだ、としても。

することをして吐き出すものを吐き出した夜はすぐに終わりを迎える。空白が埋まったようなこのうたかたが消えないうちに眠らなければ。電気を消した。時折車のヘッドライトが射し込み、中を照らす。白く鈍く光る床。ベッドに座って私は彼を見上げていた。薄闇の中彼の顔は見づらい。お金でも時間でもなく、と言葉が続いた。

「俺は、俺の好きな人に、あげたいものがいっぱいある。お金でも、時間でもなく」

それは、なんなの?と私は尋ねた。彼の口元がわずかに緩んだのだけが見えた。寝よう。隣に体をすべりこませた。彼の腕に頭を乗せて、穏やかな寝息を聞きながら、いまはただ体に流れる川の音を聞いていた。ごくちいさな囁きにも似たその音を。花のように目を閉じて。


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