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「道化師」から浮気について考える二、三の事柄 [たまには真面目に語ってみる(コラム)]

モノゴトを系統立てて調べる癖のない私は、つまり「つまみ食い」となる傾向が非常に強いといえる。例えばジャズならアフロキューバンやフリー、なかでもディジー・ガレスピーとか、もちろんコルトレーン、ドルフィーなどと、好きなジャンルでしかも好きな演奏家しか聞かないという偏り具合である。だから誰かに「オススメは?」ときかれても答えることはできない。

そういう私にとってオペラといえば「道化師」なのである。トスカも椿姫もニーベルングの指環も吹っ飛ばして「道化師」である。一度もナマで見たことがなくフランコ・ゼフィレッリが演出したのをyoutubeで視聴したぐらいだが(ドミンゴがすげーんだよ。下記動画参照)、とても好きで、ほとんど熱烈に愛しているといってもいいぐらいだ。

「道化師」のすじを簡単に説明すると、旅回りの一座がある村にやってくる。座長である道化師のカニオには年の離れた妻(兼一座の花形女優)がいるのだが、妻はこの村に愛人がおり、駆け落ちしようともくろんでいることを知る。芝居がはじまり、その台本と現実の区別がつかなくなったカニオは舞台上で妻を刺し殺し、助けに来た愛人も刺し殺してしまう。そして「喜劇はこれで終わりです」と呟いて、幕は閉じられる。

有名なのは「衣装をつけろ」というアリアで、「どんなに悲しくても客を笑わせるのが道化師だ、衣装をつけろ、舞台に立て」と自分を励ますよりもたぶんニュアンスとして自嘲的な意味合いのほうが大きい内容である。映画「アンタッチャブル」で使われており(デ・ニーロふんするアル・カポネがこのアリアを聴いているときにショーン・コネリー襲撃の知らせを受け、アリアに感銘し泣きながら口元がうっすら笑うという凄まじい演技を見せている。ひかりごけにおける三国も確かはじめて人肉を喰うシーンでちょっと笑うんだけど、ああいうところにリアリティをもたせられるというのはなまなかではないと、私は思う。閑話休題)それによって記憶に残っている人もいるのではないか。かくいう私もその一人。

この「道化師」を私はしょっちゅう聞いているんだけど、とはいえ、カニオに自らの身を重ね合わせているわけではない。たぶんそうならば、聞くことすらできないだろう。(それほどあのアリアは真に迫り、ゆさぶる)浮気をしたことはあれ、されたことのない(たぶん)身の上だからこそ、喜んで聞けるのかもしれない。

私は浮気したことはあるけど、浮気されたことはない。とはいえ、私はとても鈍いので、単に気づいてない「しあわせな人」なのかもしれないけど。

二股の経験もある。結構長くて1年ぐらい続いた。そのときはちょっとフクザツで、何人か女性が取り巻いている男が好きになり、そこに割り込んでいった状況だった。彼には20年付き合っている女がいて、結局私がふんだくった形となった。そんなことをしたのは後にも先にも、彼だけである。それだけ好きだった。

ところが、とどのつまりそういった状況はオノレの心になんらかの影、というか鬱屈を生じさせる結果となる。彼は女と別れる気配がないし(今になって思えば20年の付き合いを「はいそうですか」と即座に切ることができないのは心情としてとてもよくわかる。若いというのはモノ知らずであると同時にひどく残酷なことだ)、彼からの連絡をいつも待っているような状態は不安で消耗する。そういう鬱屈をトレーニングで消化できるうちはよかったが、だんだんとその手の「ごまかし」も通用しなくなっていった。そこで私は男を作った。自分がされているのと同じことができる男を。(虐待の連鎖っぽい話になってきた)

つくすことが幸せと自己完結できる人はいいが、そういうある種特有の自己陶酔で目くらましができない、自意識の強い女というのはこういうとき不幸を拡散させる。二股相手は私には彼がいることを知った上で付き合っていた。「彼と会うから家まで送れ」といっても素直に送ってくれていた。些細な喧嘩から私がキレて別れてしまったけれど、今考えると非常にもったいなかったなーと思う。後悔が先にたったためしはない、とはいえ。そんなババアの四方山話はさておき、明確な浮気相手(二股相手?)はその子ぐらいで、そのあとは実におとなしかった。(彼が20年来の女と別れたってのはあったけど)彼と本格的に別れようと決意して、他の男を捜すようになるまでは。(まあそれが例の5股して体ぶっ壊して入院する羽目になった例の一件ですよオクタマ)

なにがいいたいかというと、そういう私の経験則で言えば、浮気するのは相手に不満があるからに他ならないっちゅーことです。考えてみりゃ当たり前の話で、相手に不満がないのに浮気するとなるとなにか別な病気を疑ったほうがいいかもしれない。もっとも「不満がない」と自分を誤魔化している可能性もあるので一概にはいえませんが。もちろん相手には問題ないけどどうにもならない現状に対する不満ってのもあるかもしれない。そんな風にあのときの自分を正当化してみた。ああSサマ、あのときはそんなわけだったのだから、どうかゆるしてください。

「道化師」で刺されていたのは私だったかもしれない、とふと思う。
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へー八郎

若い時分の「浮気」とは必ずしも「相手に不満がある」という動機では無いように思います(あくまで私見です)。

幼子がお菓子の山を目の前にして、食べきれないくらい「あれも、これも」とたくさん取るかのように、浮気というのでは無く、どの相手にも愛を感じ、眼移りしてしまった揚句、全部欲しいと思ったりするのが原因かなと思っています(笑)

5多重というのは流石に凄いなぁと思いますが・・・('◇')ゞ
by へー八郎 (2009-11-11 02:02) 

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