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あなたの手は私の唇よりあたたかい [みちゃイヤン☆(エロ濃厚)]

彼の顔を、私はいつも忘れてしまう。

思い出すのは断片的なことだ。柔らかな髪の触感や、切り込むような視線や、しっとりと降る声、とりわけ、その手のあたたかさ。

触れた相手の、その手のほうがあたたかいことは、あまりない。それは私の体温が高いのか、相手が低い人ばかりなのか、わからないけれど。初めて触れたとき、ほんのりとあたたかく、同時に「つめたい手をしているね」と両手で私の手をはさんだ。

たぶんこのひとは、と私はおもった。劇的な瞬間を好む人だろう。演技的ではなく、演劇的な。きらいではない。朝起きたら、うしろからしてあげるよ。彼は笑った。

誰かと関係を構築することは、橋を架ける作業に似ている。トラス橋のように、小さな三角を組み合わせて、堅牢なものを架けていく。はたして橋はできあがるのだろうか。そもそも私「たち」はまだ、その「作業」にすら取り組んでないのではないか。しかしその「作業」は開始日程が組まれているわけでもない。気づいたらはじまっていて、落ちたら終わる。こうして彼に手を引かれ、路地裏をあてどなく歩いているときにも、その「作業」は続いているのだろう。

先のことは、と私は髪を揺らす。それよりもいまは。

そして私はまた、埋めるプロセスを繰り返すのだ。

体が冷えたまま、それをしてしまうと、体とそこが乖離して、奥底のとろ火だけで終わってしまう。すぐにでも入れてほしくはなるけれども、なるたけ抑える。彼の手の中に自分を置く。彼に沿うように自分の形を変える。触れられた部分には熱。着衣がはぎとられ、私はあらわになる。糸を引いてたよ、と彼は笑う。時間が爛熟していく。

わずかに湿った彼の手のひらが、胸に押し当てられる。流れた肉をすくい、親指で先をつぶされる。硬くとがる。指でつまみあげられそしてねじられる。私の周囲だけ、空気の密度が増してくる。耳朶を舌でまさぐられて、声を出すことでしか逃れられなくなる。重みが下へずれていく。足が抱えられて押し広げられ柔らかい舌の感触。いやらしいにおいがする。むきだしにされて、例の、猫がミルクを舐めるような音とともに、内側が熱くなっていく。私の声も湿り気と粘度が増してくる。ああ。もう。お願い。

声を出したら抜くからね、と身を起こし、あてがわれる。自分で入れてごらんよ。手を伸ばして、触れる。硬く、暖かい。ぬるぬるしすぎているからうまくはいらない、の。いきなり押し込まれた。私の中がしっとりとまとわりついているのがわかる。ぴったりしている。早いのと、ゆっくりなのと、どっちがいい?「実演」しながら彼は問いかける。私は頭を振った。そしてもう一度。声を出したら、抜くからね。

勃起したそこを彼の腰に押し当てる。そうしてより深い快楽をひきだそうとする。彼が口を合わせてくる。君の味がするでしょう?なかばふるえながらようやくうなづいた。おおきい、と呟くと、彼は動きを止めた。だめだよ。何度も縦に振る。こうして、と彼は独特の動き方をした。上をこすりあげると。腰は揺れ始め、意識を集中することが難しくなってくる。ゆるして。白くなりそう。

動きが早くなった。でそう。引き抜いて私の口のへ入れる。にがい味。飲み込まないように舌の上でためる。「どれくらい出たか、みせてくれる?」手のひらからこぼれそうなくらいの量。口の端にたれたのを、舌でなめとられたりして。彼の顔に触れた。片手で包むようにすると、彼の中へ入ったような気がする。

世界はもっとあなたを抱きしめるべきなんだ、と年若い友達は力説した。世界には期待しないけど、と私はちょっと視線を外した。

「あなたに抱きしめてもらえればそれでいい」
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