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映画「赫い髪の女」性と愛の臨界点 [映画レビュー※ネタバレ注意]

赫い髪の女 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 日活
  • メディア: DVD
「人間ってかなしいね。セックスしなきゃならないからだよ」というのはジョージ秋山の名台詞のひとつだけれども、その言葉を忠実に具象化したような映画である。

ドカタあがりのダンプ運転手である男(石橋蓮司)はある雨の日に赤い髪をした女(宮下順子)をひろう。一発やって捨てるつもりが女は男の狭い四畳半?にいついてしまう。来る日も来る日もただひたすら体をあわせ続ける。女がどういう素性なのかわからないし、聞かない。ただ時折亭主の存在をほのめかすだけであった。男の姉に会わせた時「どこそこで見たような気がする」といわれ女は酷く泣いた。女の存在をどこかこそばゆいような気持ちで肯定し始めた頃、以前一緒に少女(亜湖)を輪姦した舎弟のように可愛がっていた若い男(阿藤快)からその時の行為で少女が妊娠したこととどちらの子かわからないこと、そしてその少女と一緒になりたいということを告げられる。若い奴は誰の子かわからない苛立ちからお前の女をやらせろと迫る。見栄と罪悪感から男は受け入れる。男は街をさまよい街の女を抱き、誰もいない部屋に戻って猥歌を歌いながら自慰をする。そこへ現れる女。若い男と少女は駆け落ちをし、男と女はまたいつものようにセックスを繰り返すのだった。

季節がいつ頃かわからないけれども、よく雨が降っている。窓を締め切り、狭い部屋の中でたるむ一歩手前の男と腐りはじめた洋ナシみたいな女がひたすらセックスする。女が押し倒すように、あるいは男がのしかかるように。セックスばっかりしているんだけれどもそのシーンは毎回違うように工夫されている。そこにかぶる憂歌団の曲。物憂い閉塞感の中で「アレしようよ」というかったるい声が響く。70年代の残照のような「赫い髪の女」はそういう映画です。

ドカタ役の石橋蓮司がこれまた非常に板についていていいし、例によって例のごとく阿藤快と殴りあう(私がみる石橋蓮司出演映画ってたいてい誰かとツマランことで殴り合っている。丑三つの村で「夜這いしたやろー」「昼間もきとったわ!」というしょうもない理由で殴りあうのとか)のとか、阿藤快と女を共有することで友情を確かめるとか(大笑いしながらお互いの股間をまさぐりあって「兄弟じゃないか」とか言い合うシーンはバカだがほほえましいと思う)山谷初男と太ったおばちゃんのソープマットプレイなんかが息抜き的にソーニューされるも、ほぼ全編にわたって蓮司と順子の絡みが延々と続く。宮下順子のキャラ造詣が見事で、男の股間を枕にして寝たり、さびしいからといって男のトランクスをはいて寝たり、話すことといえば「してぇ」とかそんなんばっかりの即席ラーメンもロクに作れないような動物的女丸出しで、ちょっと「ベティブルー」の「ベティ」を連想したりしました。男からみた「かわいい女」を具現化したような存在。宮下順子が阿藤快に犯されるシーンも最初は抵抗しながらも受け入れてしまうというのが「女ってのはそういうものだ」というよりもむしろ阿藤快に哀れみを感じて受け入れてしまう「宮下順子の母性」みたいな捉え方をしているのも興味深い。そういう「女神」みたいな女を手にいれながらも、足蹴にしたり可愛さあまって憎さ百倍とばかりに「亭主に仕込まれたんかー」と責め続ける有様も、これまたかわいい男なんだな。劇中のほとんどが男の部屋と仕事現場と廃船という限定された空間で展開されており閉塞感どん詰まり感が横溢している。ベッドの上でムードたっぷり(死語)な官能シーンなんてのは存在せず、たいていは男の猥雑な部屋か寒々しい廃船の中で性行為が行われている。こういう風に生活感あふれる性行為を描きながら生活臭が微妙に漂わないので、濃密かつ純度の高い性愛劇となっている。汚い印象がないので品がよい気すらする。ゆえに後味がよい。出てくる人間がことごとくちんぽ!勃起!まんこにin!という直裁的ダメ人間という態様なんだけれども、そのダメ下降志向が非常に心地よいという神代のエッセンスが凝縮されたような作品だった。男は女にいれ、女は男をいれ、それ以外のなにがあるんだ?体とおせばそれでいいんだと啖呵きられているような清清しい映画である。

性行為を形而上学的に自意識過剰で捉えてしまう私からすればセックスなんてケッて感じで耽溺するなんてことはありえない事象のひとつなんですが(そもそも冷感症だし)、それでもここまで下半身と行動が直結しているというか、これほど淫している姿はうらやましいと素直に思う。からだをこすりあわせることでしか生を確認できないならば、ただそうし続けて、なにが悪いというのだ。好きな男に腰をすりつけていれば満足なんて、女冥利に尽きるではないか。わたしも、できるならばそうしたい。なにもかもから遠く離れてひたすらセックスに埋没してしまいたい。わたしにもいつかこんな瞬間が訪れるだろうかとふと思った。娼婦になれない女は、あとは母親になるしかないとはいえ、ねえ。

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