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映画「奇談」 [映画レビュー※ネタバレ注意]

奇談 プレミアム・エディション [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD
妖怪ハンター 地の巻 (集英社文庫)

妖怪ハンター 地の巻 (集英社文庫)

  • 作者: 諸星 大二郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/11/18
  • メディア: 文庫

諸星大二郎妖怪ハンターの傑作のひとつである「生命の木」を映画化したもの。諸星ファンとしてみたけれども、どーもねえ。

原作のストーリー展開は、ある学生が東北の隠れキリシタン伝説を知り、実際に訪れる。ところがその村では殺人事件が起こっており、ちょうど居合わせた稗田礼二郎が犯人と疑われながらも、その村で「はなれ」と呼ばれている地域とそこで起きた殺人事件に隠された秘密を解き明かす…というのが大まかな流れ。ひっじょーに面白いので(特に民俗学に興味がある人なら)興味をもった方はこんな説明で満足されることをよしとせずぜひぜひ原作(上記リンク先参照)を読んでほしい。

で、話は戻ってその映画化した「奇談」ですが。

まず「生命の木」だけじゃ尺が持たないからってよけいな「神隠し」エピソードを無理矢理絡ませる。これが蛇足。短髪+メガネ姿の阿部ちゃんが稗田かけらも肉薄してないのはベツモノとして許容することにしても、傍観者がどんどん加速度的に状況に巻き込まれていくからあの作品は面白いのであって、はなから主人公に事件を設定したら単なる謎解きでしかなく、そこに原作ほどの意外性を保持しえねえだろってのはわかりそうなものだけどな。で、中途半端に神隠しネタを膨らませるもんだから微妙に物語の整合性がとれなくなっているのもまたなんとも。しかもそれだけ煽った「神隠し」ネタだが、結局のところ「なんで?」への回答はナッシング。そりゃねーだろと画面のこちら側は脱力しまくり。

「生命の木」はどう考えてもエヴァンゲリオンに影響を与えているんだが(ていうか設定はまんまこれだよね?)ああいう形に昇華したエヴァに比べ、こちらはといえば、ダイナミックな妄想展開が実にちんまりとしてしまっていて、ラストの巨大な開放感に毛ほども近づけていない。そもそも善次サンのキメ台詞が「おらといっしょにぱらいそさ、いくんだー」になっているという…ってアンタ、原作がなぜ「ぱらいそさ、いくだ」なんだか理解してないんじゃねーかと。さんじゅわん様を白木みのる×3で押し切った強引さはほめたいが。見所がそこだけってのはどうよ。またこういう作品に神戸浩をつかうのはありきたりすぎてあくびがでそうだ。(そして全役者の中で彼だけが「わかってそう」なのも悲しい)

あとラストをいまさら「時をかける少女(旧版)」にするってのは本気で問いつめたかったが、そこで終わるのかと思いきやさらにまた蛇足で、主人公のモノローグで終わらせるほどの出来にはもうなにか言う気力はなくなります。(これ以上足をつけたしたらムカデになっちまいますよ。)しかも主人公は「なんで重太がパライソにいけなかったのか」理由がわからないときたよ。お前原作読んだのか?謎は謎のままでいいって根本敬先生をパクるな!

結局のところ諸星大二郎原作で「成功」してるのは「もののけ姫」だけということで、やっぱりこのひとの実写を作れるほど邦画には力がなかったのでした。まる。(これよりさらに酷いと噂の「妖怪ハンターヒルコ」はどうなんだろ…)


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コメント 2

にょお

諸星大二郎、たくさんの作品を作ってるんですね。
ぼくが知っていたのは、陋巷に在りという小説の挿絵、表紙の絵です。独特の絵で、陋巷に在りという小説の雰囲気に、たいへんマッチしていたのを思い出します。
マンガ文庫でも出版されているんですね。機会があれば、諸星大二郎作品読んでみたいと思います。
by にょお (2009-06-17 12:57) 

瑠璃子

お返事が大変遅くなりまして申し訳ありません。

にょおさん
諸星大二郎はたくさん作品があります。妖怪ハンターあたりではまるひとが多いかも。マッドメンなんてまんま「もののけ姫」です。というか諸星大二郎がやりたかったんだなあと思いました。
是非読んでみてください。お勧めです。
by 瑠璃子 (2009-07-23 21:15) 

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