SSブログ

火曜の夜 君と帰る(ひかって) [マボロシの男たち(エロ風味)]

都庁をまわって彼と帰った。

友達の、少し早い誕生祝いはなんとなくわやわやと闊達な時間とともに通り過ぎて、紹興酒も入れば気分よく、何曲か歌って外に出れば、湿気がいつもより多め。夏ほどむしむしするわけでも、梅雨のようなじっとりとねめつけるでもなく、5月の夜に柔らかく抱かれているようだった。街灯が膨らんで見えた。

駅までの道のりを、一駅遠回りすることにした。新宿西口から京王プラザ、都庁へというコースは、初めてであったとき歩いた道行だ。懐かしいと振り返るにはまだ早く、昨日のようにはもう思えない、今がそういう時期だから歩いてみたいというのもあった。夜がこんなにもしっとりと寄り添ってくれるのだから。

数ヶ月前は風が身を切るように私たちの間を通り抜けていったが、今夜はうってかわって穏やかな顔をさらしている。手をつないで、二度と戻らない時間を見つめながら、あのときと同じように。深夜に近いせいか、人通りは少ない。あの夜は私たちぐらいしかいなかったのに。

私の唇は強引に押し開かれる。彼の舌は容赦なく侵入し、内部から破壊しようとするかのように暴れまわり、私を食いつくそうとする。ガチガチと歯がなるような行為はずいぶん久しぶりだ。私を上向かせ彼は体ごとのしかかるようにして、さらに入り込もうとする。舌が吸い上げられる。引きちぎられそうだ。彼のと絡み合う。口の端から唾液が零れ落ちる。私のか彼のか、もはやわからない。身体の力が抜けていく。抱き寄せられた彼の手のひらの温かみに安堵しながら、私はおちる。

こっちだったっけ?と不意に彼が手を離した。指さす方を薄くみる。破られた白日夢はすぐに風にあおられてまぎれてしまう。どしたの?ポーッとして、と彼は微笑みながらポンポンと軽く私の頭を押さえる。くしゃりと撫でられて私も笑った。こっちは通らなかったでしょ? 新宿住友ビルから都庁へ、さらにその脇をとおり、中央公園まで。

都庁から新宿中央公園へぬける道は、かすみがかって輪郭があいまいになっていた。すれ違う闇に飲み込まれそうな、そこへたどり着いたら、もうこちらの世界には帰ってこれないような気がした。彼の手を握り締める。彼はニ三度その手を揺らして、大丈夫だよと教えてくれた。不用意に場を乱さないようにしてゆっくりと歩く。なにかを起こしてしまいそうだ。なにかがなにかはよくわからないけれども。向こう側から二人連れが静かに歩いてくる。すれ違う瞬間、よくある怪奇話のように、私たちの何十年後かの姿だった、なんてことはなく、少し上気した顔の、40歳代のカップルだった。中央公園では寝る人スケボーキングを目指す人ぴったりと身体をくっつけある男女、よくある光景だ。あのときよりもずっと夜に近い気がして、二人。ベンチの上で寄り添う男女を見ながら、あの頃のわたしたちみたい、と顔を見合わせる。彼らにも、今日の夜が、意味のあるものであることを祈った。

あっさりと公園を出てしまうから、つい、なんにもしないのねと意地悪く。だって人が多いじゃないか、と微笑みながら、顔を近づけられた。柔らかい感触が唇に触れる。もう一度、確かめてから私たちは別れた。なにもかも、終わりなき夜がはじまる。そのことを熟知しながら、また、明日、と。

起きて、昼。私は暖められた埃っぽい空気にむせながら、季節の変化を思う。夏の近さに誘われれば、あの曲を聴くしかない。「Enter The Mirror」。焦がれるような懐かしさを感じながらもEnter The Mirrorに彩られた夏は、あと少し先だ。ラリーズは裸で、そして私たちはまだまだ先の見えない子供だ。


nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:恋愛・結婚

nice! 0

コメント 1

schneewittchen

初めてディープなチュウをしたときのことを思い出しました(笑)。
なんで覚えてるかって、チュウ自体に思い入れがあるというよりも、事後がコマッタ事態になったもんで。。。

クチビルは腫れるし舌はビリビリしっぱなしで翌日になっても熱いものが食べられんは、飴ちゃんは舐められんはで閉口しましたがな。

あの、公園でナニは、「覗き」がいるそうですよ。
ま、それもシゲキを煽られるといやあそうかも(笑)
by schneewittchen (2007-05-12 18:52) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。