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晩秋にはマリアンヌ・フェイスフルを [音楽レビュー]

ロックンロールバビロンによれば、天使のような娼婦、というイメージだった彼女も、この間「パリジュテーム」というオムニバス映画の予告編にちらっと登場したのをみたらかなり太ってしまっていた。おおーあのマリアンヌもなあ…と感慨深く思っていたら『素敵な彼』ことフィリップ・シーモア(仮称)によれば、「ツアー直前に癌が発見されて延期になったらしいよ」とのこと。どうやらその副作用なのだろうか。見下したわけじゃないが、太ってしまってがっくりと思った自分が浅はかだった。

そういうわけでもないが、思わずマリアンヌ・フェイスフルのベスト盤を買ってしまった。まだアルトヴォイスが健在(ハスキーになってない。そのケはあるが)の、若かりし頃の曲を集めたアルバムである。

いろんなカバーが集められているが、MondayMondayなんかを聞くとそのなんとなくヨーデルみたいなさわやかなバック演奏とは遊離するように、暗雲が漂っているーーまるで山の天気の変わりやすさをあらわしているかのような不安感を煽られる。それはひとえに彼女の不安定な音程によるところが大きいのだけれども、しかしそれがなんともいえず心地よかったりするから厄介だ。雨が降るなと濃灰色をした空を見上げて、顔にぽつぽつ落ちてきたような安心感ではあるけれども。ルー・リードが歌ったら邪悪に陥るのだろうが、マリアンヌの不安さはあらかじめ何となく見えている不幸な結果を静かに宣告しているような、そういった厳かな雰囲気が有る。ちょうど今読んでいるフラナリー・オコナーとよくあっている。

As Tears Go Byなんてドカチャカしたバックにうまくあのアルトヴォイスが絡んで、漂いつつ彼方を見つめている感じ。イギリス訛りの(そして彼女の出身階級であるところのハイソサエティ的な)発音がちょっと硬質で、切なさを諦観とともに見つめている感じがしてたまらない。少しだけ晴れた空の下、枯れ葉を踏みつつ、この曲をともにできればと思う。ちょっと、でかけようか。

Marianne Faithfull's Greatest Hits

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  • アーティスト: Marianne Faithfull
  • 出版社/メーカー: ABKCO
  • 発売日: 1990/10/25
  • メディア: CD


ロックンロール・バビロン

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  • 作者: ゲーリー ハーマン
  • 出版社/メーカー: 白夜書房
  • 発売日: 1988/01
  • メディア: 単行本


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コメント 2

ken

あ、リズムが戻ってる。
いい感じですね、瑠璃子さん。
by ken (2006-11-02 21:06) 

瑠璃子

ありがとうございます。
リハビリ中ですが、なんとか書けていけそうです。
もうすぐこのblogも三年目か…。
by 瑠璃子 (2006-11-02 22:25) 

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