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「ホテル・ルワンダ」観覧記2(ルセサバギナ氏講演編) [映画レビュー※ネタバレ注意]

『映画編』に続き1月6日に行われましたホテルルワンダ試写会ならびに映画のモデルとなったポール・ルセサバギナ氏を招いたシンポジウムの模様についてルポします。)

20分ほどの休憩を挟み、シンポジウムがはじまる。事前に“ポールさんへの質問用紙”が手渡され、休憩時間中に回収するようになっていた。私もいくつか書いて提出する。講演のあと質疑応答の時間がもうけられるようだった。
(以下講演内容について触れてますが、私のメモ+記憶によるものなので多少の相違があると思われます。ご留意ください。)
全体図。

この方がモデルとなったポール・ルセサバギナ氏。まずルセサバギナ氏の講演(英語)が行われ、その後パネル・ディスカッションへと移行する流れとなっている。理知的な面差しと丁寧に一言一言区切って発音される英語が印象的だった。彼は真摯に「あのときあそこでなにが起こったのか」ということを伝えようとしていた。最初にルワンダの出来事を自分が見てきたとおりに語ってくださる。大筋は映画のストーリーそのままだが、やはり違っている部分も多い。例えば映画の中で、ホテルに逃れた来た人々が各国へ救援のための嘆願電話をかけ、何人か脱出が認められPKFの護送によりホテルからトラックで逃げるシーンがある。そこで彼も脱出が認められていたのだが、家族を送り出し、自分は「ホテルを守る責任があるから」といって残る(※1)。だがトラックはPKFの努力もむなしく、途中で襲撃され、またホテルへと帰らざるを得なくなる。そのとき映画では妻は無傷で戻るのだが、実際は襲撃により血だらけとなり身動きすることもできない状態で、その後何週間もベッドで寝込むことになった、という。そういった興味深い話が続く中、私が驚いたのは、ルセサバギナ氏はあの結末をむかえてから2週間ほどでホテルに戻り掃除したそうだ。その実直さを思うと現在亡命先のベルギーで重量物運送会社を経営しているのもうなずける。講演内容で印象的だったのは「私の使命はホテル・ルワンダの映画を広めること。これを機に認識を改めてほしいし、私のメッセージを他の皆にも広めて欲しい。映画を見た一人一人がメッセンジャーとなってくれることを望んでいる。」「私がもっとも悲しかったのは、タフールからの帰りの飛行機で見たホロコースト60周年記念式典に参加する各国首脳達の姿だった。彼らは『NEVER』『AGAIN』(selaさんフォローありがとうございました)を繰り返していた。でもそれは私がいまダルフールで見てきたものに他ならなかったからだ」という言葉だ。先進国はアフリカでの出来事に目をそらし続けている。彼が糾弾したかったのはおそらくその部分だろう。

質疑応答にはいる。(Qは質問内容、Aはルセサバギナ氏による回答)

Q:フツ族とツチ族の対立図式とその歴史について
  現在は対話が戻っているのか

A:フツ族とツチ族は憎しみあって対立しているわけではない。統治方法に問題がある。現在、問題はまったくかわってない。

Q:家族について

A:(※1のシーンについて)どこへ行くのかもわからず、見送りするのは本当につらかった。そのままずっと帰らないケースもたくさんあったのだから。

Q:本気でこの世を変えていこうという人たちを増やすにはどうしたらよいのか。

A:世界を変えたいと思っている人は多いと思うがその声が小さい。大きな声で叫ぶ人たちにかき消されてしまう。どこの誰でも心の中に柔らかい部分はもっている。そこへ訴えれば必ず答えてくれる。だから分断しようという統治者が悪いのかもしれない。

Q:そういう人たちへ希望を持って説得するにはどうしたらよいか

A:本当に願えばなんとかなると私は思ってる。映画ができることによって、私は3日に一度、ルワンダについて講演できるようになった。子供たちや学生、つまり未来の大人へ話しができるのならば、きっと希望がもてる。

(『パネルディスカッション編』へと続く)


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コメント 5

mig

こんにちは。TBありがとうございます、
興味深く読ませていただきました。
やはり忠実に、映画化、ではないのですね。
それでも現状を知る事から始まる。。。



本当に多くの人にこの映画観てもらいたいですね。
by mig (2006-01-16 09:55) 

ガワ氏

始めまして、ガワ氏ともうします。
ポール・ルセサバギナさんのセリフ「私がもっとも悲しかったのは~他ならなかったからだ。」の部分を読んで、以前ルワンダの難民救済をなさっていた方の公演のなかで、「過去にこの土地て何があったかを忘れないために、今も虐殺の現場を何も手をつけないままにしている(もちろんなくならられた方の亡骸も含めて)村がある。」 とのお話を聞いたのを思い出しました。
オブラートに包まず何が起こったのかをまず直視せよ、という強烈なメッセージだと思います。

それでは、失礼いたします。
by ガワ氏 (2006-01-16 10:02) 

瑠璃子

>migさま
はじめまして。ようこそお越しくださいました。
あの長きにわたる苦闘を2時間の枠の中に押し込めてしまうには脚色が必要になってしまうんでしょうね。でも映画は事実じゃなくても感動を伝え、考えるきっかけを与えてくれたと私は思います。この映画がいろんな方に見てもらえると本当によいですね。
>ガワさま
はじめまして。ようこそお越しくださいました。
ルセサバギナ氏は力強く、丁寧に講演されてました。どうしても伝えなければならないんだ、という姿勢に胸打たれます。この映画をきっかけにアフリカについてもっと知りたい、そうすれば希望が生まれるかもしれません。そんな風に思いました。

お二方、コメント有り難うございました。
by 瑠璃子 (2006-01-16 19:21) 

優美

はじめまして。
TBありがとうございました。
映画を観てから少し時間がたってしまったのですが、
ルセサバギナさんのお話しを読んでいて、感動と悲しみが
思い出されます。
映画もですし、講演会の内容も、もっと多くの方に
知れ渡って欲しいと思いました。
by 優美 (2006-01-29 09:57) 

ETCマンツーマン英会話

ポール・ルセサバギナ氏の 『ホテルルワンダの男』を読みました。来日講演で直接お話を聞かれたのですね。うらやましい。

>どこの誰でも心の中に柔らかい部分はもっている。そこへ訴えれば必ず答えてくれる。

とても貴重なアドバイスですね。単に声を上げるだけでなく、知恵を絞る必要性を感じました。
by ETCマンツーマン英会話 (2014-06-13 14:57) 

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